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「自社のサステナビリティ」は日本独自の言い方。日本のサステナビリティ経営をガラパゴス化にしないように注意が必要


日本は、世界的に見て長寿企業が多く、200年以上の長寿企業の数は、世界の4割以上を占め、2位ドイツの2倍以上とされています。ゾンビ企業を生かすことについては批判があり、長生きすれば良いというものではないですが、本物の長寿企業は、長期視点で本質的に目指すべきものを持ち、社会の動向を洞察して必要に応じて変化し、結果として長生きしています。こうした企業は賞賛されるべきでしょう。


日本企業の継続重視の考え方は、「家を継ぐ」という伝統に基づくところもあるでしょう。長期視点で企業を継続させていく経営、そのために社会やステークホルダーに価値を生み出し続けることは重要です。


しかし、それを「サステナビリティ経営」というのは間違いです。


サステナビリティは、環境問題や格差・人権問題の深刻化など、社会の持続可能性が懸念されているなか、世界のサステナビリティをいかに実現するかが目的であり、サステナビリティ経営は、世界がサステナビリティに向けて動くなかで、企業としてそれに対応していくものです。


サステナビリティ経営は、自社の事業・バリューチェーンが社会・環境にどう影響を及ぼすか、その影響がどう財務に影響するかを理解し、戦略的に対応していくものです。サステナビリティ経営には、自社の財務・企業価値への影響のみを考えるシングルマテリアリティ、社会・環境への影響も考慮するダブルマテリアリティという2つの考え方があります。


シングルマテリアリティの場合は、気候変動、サーキュラーエコノミー、生態系保全、人権などの世界の重要課題に対して、自社にとっての機会・リスクの観点からいかに企業価値を高めるかを戦略的に考え、実践します。


これは、今の時代に「自社を継続・存続させていく経営」の重要な要素ではありますが、本質的に異なるものです。日本では、「自社のサステナビリティ」という考えから、自社を継続・存続させていく経営のことを「サステナビリティ経営」と称する人もいますが、これは日本独自の言い方です。


日本企業では、気候変動などの世界のサステナビリティ課題とは関係がない、「デジタル社会への貢献」「イノベーションの創出」などといった、中計に書いてある内容をマテリアリティとする企業も多いのですが、これも日本独自の動きです。


日本企業のサステナビリティ経営がガラパゴス化し、世界共通の動きからズレないように、こうした日本独自の言葉の使い方や取組みには注意が必要です。「自社のサステナビリティを追求することが『サステナビリティ経営』だ」などとしていると、場合によってはウォッシュなどと見なされるリスクがあります。


発言力ある専門家などの影響なのか、日本企業は、「サステナビリティ経営」などのグローバルな動きに対して独自性のある取組みをしてしまうことがあるのですが、独自性を追求する場合でも、グローバル共通の考えや動きをしっかり理解しておくことが必要です。

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