DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー2025年1月号に「「成長する製品」を戦略的に開発する法」という記事が載っています。「リバース・イノベーション」などを提唱した戦略とイノベーションに関する世界的権威であるビジャイ・ゴビンダラジャン氏などによる記事です。
「成長する製品」とは、ユーザーのニーズの変化に合わせて進化・拡張する製品です。子どもの成長に合わせて、親が操縦する、子供が操縦するが親が管理できる、子供が自律的に操縦するという3つの操作モードを使い分けられる子供向けの車などが例としてあげられています。アップルのiOSやテスラの車のようにソフトウェアのアップグレードにより機能を向上していく製品も含まれます。
「成長する製品」は、耐用年数が大幅に伸びて買い替えが不要または先延ばし可能になり、ユーザーが使い慣れることで「顧客価値」を高めます。顧客と長期的な関係性を築くことができ、顧客ニーズを製品のアップグレードに反映するなどもできます。
また、新たな製品製造やそれに伴う資源利用、GHGや汚染物質の排出が不要になり、「サステナビリティ」にも貢献します。「成長する製品」は、サーキュラーエコノミーの基本ビジネスモデルである「製品寿命の延長」を実現するものです。
筆者によれば、成長する製品という市場は、7つの課題を克服するのに役立っています。
① 年齢に応じた成長:子供は成長するにつれて、サイズの拡大やスキルの向上に合わせて変更できる製品を必要とすることが多い。
② 加齢に伴い課題:高齢ユーザーは能力が衰えて、必要とする製品が徐々に変わっていくことが多い。
③ 先天的な制限:医学的状態や身体的障害は人々の一生を通じて進行し、新たなサポート要件が生じることがある。
④ 目新しさへの欲求:顧客は同じままの製品に興味を失うことが多い。
⑤ 学習ニーズの変化:学生に提示する情報の難易度や量は、その時点でそれぞれ適したレベルに設定する必要がある。
⑥ 技術進化:特徴や基本的な技術仕様が変わり、アップグレードが必要になることが多い。
⑦ 性能ニーズの変化:多くの種類の機械や設備はたえず機械的な改良が必要になる。
成長する製品は、ハードウェアの形態変更やモジュール追加・改修、ソフトウェアの更新や設定変更などでこうした課題に対応します。企業は、買い替えが減ったとしても、価格プレミアム、アップグレード、補完製品・サービスやメンテナンス、ブランドコミュニティなどを通じて、収益を上げることができます。
技術の進化により「成長する製品」の実現可能性は向上しています。サーキュラーエコノミーの要請が強まる中、注目すべきコンセプトでしょう。
(参考)
「「成長する製品」を戦略的に開発する法」ビジャイ・ゴビンダラジャンほか(DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー2025年1月号)
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