以前、「政官財の鉄のトライアングル」という言葉がありました。政策決定における政界、官界、財界の癒着構造、政治家への献金・票、官僚への権限・天下り、業界への予算・法案という便益で3者が結びつき、国益・国民益よりも省益・企業益を優先する政策決定がなされることを示すものです。旧時代のネガティブな意味合いのトライアングルです。
新しい時代には、サステナブルな社会を築く、別のトライアングルが必要です。最近読んだ、「モア・フロム・レス」(アンドリュー・マカフィー著、日本経済新聞出版)にそのヒントがありました。
「モア・フロム・レス」は、米国のデータにおいて、経済が成長しても資源消費が減少する脱物質化が起きていることを示した上で、著者が希望の4騎士と呼ぶ「テクノロジーの進歩」「資本主義」「反応する政府」「市民の自覚」が揃えば、持続可能な成長が可能であると主張しています。脱物質化を可能とするテクノロジーが進化し、低コスト化され、資本主義の中でそれが広がっています。また、環境・社会問題を懸念する政府と市民が、負の外部性を解決する政策を導入し推進する力となっています。これらがうまく機能することで、これまでも環境・社会問題を解決してきたが、これからも持続可能な社会を築く力となるだろうとしています。
「モア・フロム・レス」の4騎士に企業は登場しませんが、テクノロジーを進歩させ資本主義の中で広げるのは企業です。企業、政府、市民のトライアングルが機能してこそ、資本主義を基盤とし、テクノロジーを媒介として、持続可能な社会が築かれます。
この新時代のトライアングルでは、持続可能な社会の構築に向けて、政府が適切な政策を採用し、市民が消費者や有権者としての力を生かして企業や政府の持続可能な社会構築に向けた動きを促進します。企業のほうも、政府にルールメイキングを働きかけたり、消費者を啓発することで、自ら持続可能な社会構築に向けた市場創造を働きかけます。そして、企業が資本主義のメカニズムの中で、その本質的機能であるイノベーションやマーケティングを通じて、持続可能な社会に貢献するテクノロジーを生み出し、持続可能な社会に貢献する製品・サービスの市場を広げます。
このように、政府、市民、企業のトライアングルが、持続可能な社会構築という同じ方向に向かって意識を合わせて行動していくことが重要です。この政民財のサステナビリティトライアングルを如何に機能させるがが、日本がポストSDGs、ネットゼロ社会で世界をリードし発停していくためのカギを握るでしょう。
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